何があった?
2018年、TATERUで、融資審査に使う顧客の預金残高資料の改ざんが発覚しました。特別調査委員会は2015年12月の上場以降を主な対象とし、上場前の経緯も調べています。
この報告書で気になった12か所
会社支給PCの標準画像編集ソフトで、預金残高の数字を切り貼りしていた
調査で認められた不正の大半は、金融機関へ提出する顧客の預金残高に関する資料の改ざんでした。
営業職員らは、顧客から受け取った預金通帳や残高証明などのデータを会社支給のパソコンへ取り込み、JPEGやTIFFへ変換していました。
そのうえで、パソコンに標準搭載されている画像編集ソフトを使い、数字を切り貼りして預金残高を書き換えていました。
加工したJPEGやTIFFは、印刷して金融機関へ郵送するか、PDFへ再変換してメールで送られていました。基本的に顧客には改ざんの事実を知らせていませんでした。
改ざんの実行者は31人。2,269件の成約のうち350件を認定
委員会は、金融機関・顧客から得た情報、デジタル・フォレンジック調査、営業職員へのヒアリングなどを組み合わせて、改ざんの有無を認定しました。
預金残高資料の改ざんを実行したと認定された従業員は、営業部長や部長代理を中心に31人。本調査対象期間の成約2,269件のうち、350件で改ざんが実行されたと認定されました。
同じ資金を別口座へ移し、送金前と送金後の残高を両方提出した
画像の数字を書き換える以外に、「口座間移動」と呼ばれる方法もありました。
複数の銀行口座を持つ顧客について、まず一方の口座残高をコピーや画像で記録します。その後、その預金を別の口座へ送金させ、着金後の残高も記録しました。
同じ資金について、送金前の口座と送金後の口座の双方の残高を、顧客の自己資金を示す資料として金融機関へ提出する方法でした。
顧客自身に資金移動してもらう必要があり、拒否やクレームのリスクもあるため、実行例は限定的だったと報告書は記しています。
他人の預金通帳の写しを、顧客のものとして使う手法もあった
別の方法として、顧客本人ではない人の預金通帳の写しを使うケースもありました。
営業職員が、他人の預金通帳の残高ページの写しを顧客の資料として流用し、その顧客が自己資金を持っているように見せる手法です。
同じ残高資料を繰り返し使うことには限界があるため、この差し替えが行われたケースは限定的だったとされています。
不正で積み上がった実績を元に、販売目標は年々増えていった
経営陣は販売目標を達成困難なノルマとは考えていませんでした。一方、営業職員、特に営業部長らは、通常の営業方法での達成は極めて困難な必達目標だと受け止めていました。
その認識のずれが修正されないまま、販売目標は引き上げられていきました。
委員会は、経営陣がエビデンス改ざんなどの不正による実績を元に販売目標を年々増やし、営業職員はその目標を達成するため不正を止められない関係にあったと考察しています。
委員会は、この販売目標をめぐる認識の乖離を、不正を生んだ大きな原因の一つとしています。
上場前、一時期は管理部職員とその部下が集中的に改ざんしていた
預金残高の改ざんが始まった正確な時期や経緯は不明ですが、報告書は2010年頃から複数の事業所で改ざんが行われていたとしています。
さらに上場前の一時期には、営業職員が特定の管理部職員へ改ざんを依頼する運用がありました。
その管理部職員と部下が、集中的に預金残高資料の改ざんを行っていた時期がありました。
一部の営業職員の間では、改ざんを指す隠語も使われていたと報告書は記しています。
本物の通帳との違いが銀行に発覚して取引停止。それでも「一担当者の不正」として処理した
上場の数年前、顧客について提出された通帳資料が、本物の通帳と異なることを金融機関に発見された事案がありました。
その金融機関との取引が停止される事態になりましたが、会社はこれを一担当者の不正行為として認識・処理しました。
対応は、そのような不正をしないよう通告することにとどまったと報告書は記しています。
「上場するには不正を止めなければならない」と複数回通告したが、実態調査はしなかった
遅くとも2014年頃には、部長会議などで営業本部長から営業部長らへ、預金残高資料の改ざんと二重契約を止めるよう複数回通告されました。
理由として報告書が挙げているのが、株式を上場するには不正行為を止めなければならない、というものでした。
しかし、禁止を通告するだけで、当時、不正に関する必要な実態調査は行われませんでした。
不正禁止の通告を「形だけ、建前だけ」と受け取る営業部長らがいた
禁止通告後、二重契約についてはシステム上の制約などもあり、少なくとも上場後には見られなくなりました。しかし、預金残高資料の改ざんは根絶されませんでした。
営業部長らの中には、改ざん禁止の通告を、二重契約の禁止とは違って「形だけ、建前だけ」のものだと受け取る者がいました。
また、特定の管理部職員へ依頼することはできなくなっても、各営業部が自らリスクを取れば改ざんは可能だと捉える者もおり、販売目標を達成するため密かに改ざんを続けた者がいました。
いったん改ざんを止めても、目標達成が難しくなると上場前に再開した
不正禁止の通告を受けて、一時は預金残高資料の改ざんを止めた営業部長らもいました。
しかし、その後に販売目標の達成が困難になると、株式上場前に早くも改ざんを再開していた営業部長らもいました。
上場後も、叱責や降格を避けたい、営業成績を上げて待遇を良くしたいと考え、改ざんを継続・再開したり、新たに始めたりする者が存在したと報告書は記しています。
改ざんを訴える書簡が代表取締役まで届いたが、同様の不正は調査しなかった
2018年2月、上場前にTATERUと土地売買・アパート建築契約を結んだ顧客から、融資申請時に営業職員による預金残高資料の改ざんがあったと訴える書簡が届きました。
代表取締役と担当営業本部長らが報告を受けましたが、この件は個別の不適切行為として処理され、ほかにも同様の不正がないかという調査は行われませんでした。
その後の同年6月には、別の顧客からも、金融機関へ提出された預金残高が実際より水増しされているとの申告があり、会社の調査で申告内容が事実だと判明しました。
改ざんを訴えた顧客書簡は、コンプライアンス委員会にも経営会議にも上がらなかった
2018年2月の顧客書簡で、過去の改ざんは一部役員に把握されました。
しかし、この件は代表取締役や担当役員からコンプライアンス委員会や経営会議へ諮られず、その結果、監査等委員会にも報告されませんでした。
委員会は、各会議体へ何を報告するかが必ずしも明確に規定されておらず、担当役員が一営業職員による個別の不適切行為として処理し、解決済みだと判断したことが主な原因だと考察しています。
報告書が指摘した背景
委員会は、経営陣と営業現場の間で販売目標の位置付けや達成難易度について大きな認識のずれがあったこと、販売目標必達の意識、厳しい上下関係やパワーハラスメント、歩合給、融資申請書類の受け取りから金融機関への提出までが営業職員に集中していたことなどを、不正の原因として挙げています。
一方で、株式上場後も営業本部長らが不正を認識していたはずだという関係者の供述については、本人らが否定し、その認識を認めるに足りる証拠はなかったとしています。代表取締役やその他の役員についても、不正そのものを認識していたことを認めるに足りる証拠はなかったと整理しています。
出典は2018年12月27日公表の「調査結果報告書(要約版)」。ページは本文の印字番号で、JPX開示PDFでは2ページ後に当たります。
