何があった?

関西電力では、福井県高浜町の元助役・森山榮治氏や森山氏と関係する企業から、役職員が長年にわたって金品を受け取っていました。

2020年3月に公表された第三者委員会の調査報告書では、関西電力とグループ会社の役職員75人による金品受領が確認され、総額は約3億6,000万円相当とされました。委員会は、金品の受領だけでなく、森山氏との関係、関係企業への工事発注、2018年に問題が把握された後の社内調査や公表判断なども検証しています。

背景情報:関西電力(Wikipedia)

この報告書で気になった12か所

受け取った金品の額だけでは、当時の現場の様子は見えてきません。持ち帰ってから気づいた紙袋、金品を返そうとして怒られた人たち、森山氏への対応を後任に伝える資料。さらに、問題発覚後の社内調査や、取締役会へ知らせないという判断も報告書に残されています。実際のメールや書面も含め、特に具体的な12か所を原文のページ付きで紹介します。ページ番号は本文の印字ページです(付箋5のみ、番号のない別紙のPDFページ)。

付箋 01

取締役の自宅に、1kgの金の延べ棒が2本置いていかれた

1990年代前半以降、当時取締役だった人物も森山氏から金品を受け取っていました。

その中には、1kgの金の延べ棒2本と金の小判などがありました。

本人の説明によると、延べ棒は取締役に就任した後、森山氏が自宅を訪れた際に置いていったものでした。当時の時価では、1本約140万円だったとされています。

関係者の説明
付箋 02

お茶や菓子の紙袋を持ち帰ると、底に商品券が入っていた

金品は、現金の入った封筒を直接渡す方法だけではありませんでした。

役職員の説明によると、多くの場合、お茶や菓子などの手土産が入った紙袋を渡され、その紙袋の底に商品券などが入っていました。

初めてこの方法で受け取った人の中には、その場では気づかず、会社や自宅へ戻ってから金品を見つけた人もいました。

関係者の説明
付箋 03

金品を返そうとすると激昂され、同額程度の品物で「返礼」する方法が引き継がれていた

第三者委員会のヒアリングでは、森山氏から渡された金品を拒んだり、そのまま返そうとしたりすると、森山氏が激昂することが頻繁にあったと、多くの役職員が説明しました。

報告書には、金品を受け取れないのであれば原発をやめると高浜の関係者に言う、という趣旨の発言を受けたとの説明も記録されています。

そのため、受け取った金品と同額程度の品物を買って森山氏へ返礼する方法が使われ、前任者や同僚からそのやり方を教えられた人も多数いました。

関係者の説明
付箋 04

本物の現金を渡さずに済むよう、トランプなどで「偽札」を作った

原子力事業本部の鈴木氏は、吉田開発の役員に対して自分への金品提供をやめるよう求めていましたが、その役員から、森山氏に言われて仕方なく準備しているとの説明を受けたと述べています。

鈴木氏の説明では、そこで両者は、本物の現金を渡さずに、森山氏には受け渡しが行われたように見せる方法を考えました。吉田開発側の役員が偽の札束を用意し、森山氏の目の前で鈴木氏へ渡したというものです。一方、相手方役員は第三者委員会に対し、この偽装を否定しました。

第三者委員会は、鈴木氏から「偽札」の実物を受け取って確認しています。

その偽の札束は、トランプや雑資料の裏紙を札束ほどの厚さにまとめ、紙で包んだものでした。

委員会は、実物や使われた裏紙なども踏まえ、鈴木氏の説明の信用性は高いと評価しています。

関係者の説明委員会の指摘
付箋 05

金品一覧の返礼欄には「絵画」「包丁」「魔鏡」「瀬戸物の壺」まで並んでいた

報告書末尾の別紙4-1-2-2には、受領した金品と、返却・返礼の内容が別々の欄に記載されています。

返却・返礼欄には、絵画、包丁、魔鏡、ネックレス、バカラのガラス花瓶、瀬戸物の壺が並んでいました。

商品券5万円分に対する返礼の魔鏡は10万円相当。瀬戸物の壺には、50万円相当や100万円相当と記されたものがありました。

確認された事実
付箋 06

金品を「付箋」で整理した人がいる一方、倉庫からは誰のものか分からないロレックス2個が見つかった

受け取った金品の保管場所は、自宅、貸金庫、職場の机の引き出し、社内キャビネットなどさまざまでした。

鈴木氏は、受領した金品について、日付、金額、相手方などを付箋に記載して整理して保管していました。

一方、第三者委員会の調査中、関西電力の倉庫から、森山氏からの会社預り品であることとロレックス2個であることを記したメモ付きの腕時計が発見されました。

ただし、誰が森山氏から受け取ったものなのかは判明しませんでした。

確認された事実
付箋 07

高浜発電所長の引継資料には、「引継ぎ事項(先生編)」という項目があった

高浜発電所では、森山氏への対応が所長の引継事項になっていました。

2014年に作成された引継資料には、森山氏を「先生」と呼ぶ「引継ぎ事項(先生編)」という項目があり、電話への対応や定例的な行事、関係企業への発注などが記載されていました。

別の社内メールでは、所長が森山氏から月10回程度の電話があると記し、その頻度を「2日に1回程度」と表現しています。事故対応中にも関係企業への追加工事について実績報告を求められ、発電所の保修関係者を対応に使ったことも書かれていました。

2011年1月7日・高浜発電所長から原子力事業本部長らへのメール(抜粋)

申し訳ありませんが、また愚痴を言わせて下さい。問題はありませんので、安心して下さい。 [中略] いつまでこんな対応をしているのか、大いに疑問。毎月京都で一対一の対話、月に 10 回程度(つまり 2 日に 1 回程度)の電話。エスカレートしている? 以上、愚痴でした。これで、私のガスも抜けますので、明日以降、また普通に対応しますので、ご心配はいりません。愚痴を聞いて頂き、有難う御座いました。
調査報告書・印字 p.127日本語原文PDF ↗
確認された事実
付箋 08

翌年にどの工事をいくら発注するか、年1回説明する運用が後任へ引き継がれていた

関電不動産開発では、遅くとも2000年代前半から、幹部が森山氏と年1回面談していました。

その場では、吉田開発、X2社、X4社へ翌年発注する予定の工事内容と概算額を森山氏へ説明していました。

2010年代以降、森山氏が説明を求める対象は吉田開発への工事だけになりました。この関係は2010年代後半まで続き、その対応は前任の幹部から後任へ引き継がれていました。

別の工事では、関西電力本体の高浜発電所長が森山氏に、追加工事の発注状況を文書で報告していました。

2010年11月22日・高浜発電所長から森山氏への文書(抜粋)

添付には、今年の 7 月末にご報告いたしました追加工事の、契約状況や契約金額等を記載しております。工事内容や実施時期を具体化して参りました結果、ご報告申し上げました工事件名とは異なるものが多く御座いますが、お約束は必ず果たす所存で御座いますので、これからもご指導を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。
調査報告書・印字 p.129日本語原文PDF ↗
確認された事実
付箋 09

原子力部門の社内調査は、自分も森山氏から金品を受け取っていた人物を通じて行われた

2018年に関西電力が行った社内調査では、原子力事業本部に所属する人への調査を、副事業本部長の善家氏を通じて実施しました。

ところが善家氏自身も、森山氏から金品を受領していた人物の一人でした。

さらに、調査対象には善家氏の上司である豊松氏も含まれていました。第三者委員会は、税務調査開始直後の緊急対応であればまだしも、一定期間が経過した後は、金品の受領者である善家氏を調査主体として機能させることは避けるべきだったと指摘しました。

委員会の指摘確認された事実
付箋 10

「公表しない」と決め、情報漏洩を避けるため取締役会にも知らせないことにした

2018年9月、当時の会長と社長は相談役とも相談し、金品受領問題を対外公表しない方針を決めました。

翌月には、問題を知る人が増えれば情報漏洩のリスクが高まるとして、取締役会にも報告せず、社外取締役を含む個々の取締役にも報告しない方針を決めました。

法務部門内ではこの判断への異論も出ましたが、報告は行われませんでした。社外取締役は会社から説明を受けることなく、2019年9月の報道で初めて問題を知りました。

確認された事実委員会の指摘
付箋 11

金品受領問題で「厳重注意」を受けた3人が、翌年そろって昇進した

2018年9月25日、金品受領問題を受け、森中氏、鈴木氏、大塚氏には「厳重注意」の社内処分が下されました。

翌2019年6月、森中氏は副社長執行役員・原子力事業本部長へ、鈴木氏は常務執行役員・原子力事業本部長代理へ、大塚氏も常務執行役員へ昇進しました。

確認された事実
付箋 12

約1億1,000万円相当を受領した元副社長は、退任翌日に月490万円の役職へ就いた

豊松氏について、第三者委員会は、森山氏や関係企業から40回以上、総額約1億1,000万円相当の金品を受領したと認定しています。

2019年6月21日に取締役を退任すると、翌22日、原子力関係を担当するエグゼクティブフェローに就任しました。報酬は月額490万円でした。

報告書によると、この月490万円は基本報酬370万円だけではなく、2種類の補填分を加えた金額でした。

その内訳には、金品受領に伴う修正申告の追加納税分を補填する趣旨の月30万円と、過去の役員報酬削減分を補う趣旨の月90万円が含まれていました。

ただし豊松氏本人は、490万円の中に追加納税分や過去の役員報酬削減分の補填が含まれているとは認識していなかったと、第三者委員会に説明しています。

確認された事実関係者の説明

報告書が指摘した背景

第三者委員会は、2018年の社内調査について、対象とした期間や人の範囲、調査の深さが不十分だったと指摘しました。また、取締役会や社外取締役を含む個々の取締役へ報告しなかったことで、客観的な議論の機会が奪われたと評価しています(報告書173-175ページ)。

出典は、関西電力が公表した第三者委員会の調査報告書です。

この記事の訂正

  • 付箋05の絵画・包丁・魔鏡・ネックレス・バカラの花瓶・瀬戸物の壺は、一覧の受領内容ではなく返却・返礼欄の品物と訂正しました。商品券などの受領品とは区別しています。この一覧には印字p.233がないため、別紙4-1-2-2のPDF233ページとして表示し、該当ページを明示しました。付箋08では2010年代以降の説明対象が吉田開発に限定されたこと、09では委員会が緊急対応と一定期間経過後を区別したことも補いました。付箋11には2018年9月25日の処分日を裏付けるp.170、12には豊松氏の受領総額と回数を裏付けるp.88を補いました。

サイト全体の訂正履歴

この記事の編集について各付箋は原文のページに紐付けています。関係者の説明と、調査委員会が確認・評価した内容をできる限り分けて記載しています。記事は原則として、この報告書に記載された内容を対象にしています。